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とてもよく晴れた穏やかな日だった 駅前には観光客が溢れかえり ひどく疲れてしまった 彼らはみなとてもゆっくり歩き 急に立ち止まっては写真を撮り出すし 大きな声で騒ぐのでまったく穏やかではない もはやありふれた光景ではある 喧騒を抜けて裏の路地へ入ると隠れ家カフェには長蛇の列が出来て少しも隠れてはいない そもそもこの町に湿気った路地裏なんてものは数年前からなかった 成人映画館が無くなり 煙草店の女主人は高齢のために店を畳んで田舎へ帰り もうあの頃とは違うのだ アーケードの破れた天井から見えた空だってもうないのだから