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ハイスクールには2年弱しか通わなかった だから 倫理や物理を知らないし 微分積分もわからない 哲学の授業の代わりにはならないけど宗教の時間はあった 聖書を読んだあと 担当の先生が講話をしてくれたのだけど 覚えている話はふたつしかない ひとつは失恋した友達の話を感想に交えて書いたら 神様は願い事や恋愛を叶える為にいるのではないと言われたこと それから 豚肉にはよく火を通さなければならないということだ

豚肉 なぜそんな話になったのだろう? 滅多に姿を現さない偉い人が来た日だった ヨボヨボしながら 話の最後にもう一度「豚肉には よく火を通すように!」と言ったので 私たちは笑いを堪えるのに必死だったし 先生たちも呆気にとられた顔をしていた たぶんその日の感想文には皆同じことを書いたと思う 「豚肉はよく火を通してから食べます」とかなんとか

思春期の 愚かなわたしがふたつも憶えているなんて上出来だし ささやかだけど 本当に役に立つことではある