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前照灯が暗闇を切り裂いて あなたを乗せた特急列車は海のある町を目指す 適切な速度 定刻通りに物事は進む

やろうと思ったことが半分も出来ない やらないと仕方ないのだけど 気持ちの切り替えが出来ないまま わたしは眠る

あなたは水面に板を浮かべ 風と光を浴びながら 全身で生命の息吹を感じるでしょう わたしだってほんの少しは知っている

 

海岸沿いの町で ニャアニャアと鳴いているのはウミネコ わたしは有明の水面へ滑り込む まだ夜の闇が少し残った冷たい水が肌を包む

足がつかないところを泳ぐのは慣れたけれど やっぱり少し怖い そしてその怖さを忘れてはいけないと思う 泳ぐときも溺れるときも ひとりきりなのだ