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ふいに思い出したマンションの名前を検索したら 不動産仲介業のサイトがヒットしたので 写真を見たら 部屋番号を見る前にわかった わたしが初めて入った男の人の部屋 家具がなくとも見覚えがあるキッチン 駅から徒歩5分 2LDKでひとつは洋室 もうひとつは和室 その部屋に敷かれた布団の上でわたしは

 

天井に貼られた「空」の字と 西陽が透ける墨染の衣 あの時失ったのは処女だけでなく信仰心もだった  正確には神仏を敬う気持ちではなく 聖職者と呼ばれる人々に対する畏敬の念であるので 遅かれ早かれ無くなるものだったとも思う