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弱くなった陽射しが 東の空から降り注ぐ朝 背中に滑ってゆく風を感じて思い出すのは 北国の短い夏のことだ 夜の帳が下りきらないうちにまた日が昇る繰り返しで 永遠のように感じた日々 湖のほとりで わたしたち一家は余暇を楽しむことに専念していた 夏の家の木の香り たわわに実った紫色の果実 森のざわめき 飛び跳ねる魚に 裸足で歩いた草むらの湿り気 全てが昨日の出来事のように鮮明に思い出せるのに 昨夜食べた食事のことはよく覚えていない 美味しかったことだけは確かなのだけど