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死んだ祖父がよく買い物をしていた生花店で 蘭の鉢植えを買った 剥き出しの根がポットからはみ出し ちいさな白い花が5輪ほどついている このまま家にある適当な鉢に入れたら良いのかと聞いたら あり物で良ければと レジ横に積んであった鉢から適当な大きさのを取り出して入れてくれた ちょうど欲しかった黒色の鉢だ

祖父も蘭が好きだった けれど胡蝶蘭ではなかったと思う 葉の形が記憶の中のそれと違うので きっと別の種類だったのだろう それから昔うちがあった辺りを歩いた もうとうの昔に更地になっているのだけど あまりに狭い土地なので かつてそこに2軒も家があったとは思えないし ちょうど今時分 朱くて丸い果実をたわわに実らせる柘榴の木や 木小屋に共同浴場まであったというのはにわかに信じがたい話である