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なんとなく そういう気分になったので首から下の毛を全部剃った 腕も脚もアソコもつるつる 腋の下は永久脱毛済みだからそのままでいい 茂みを失った丘のむこうにはアンズタケが潜んでいるけれど対して興味もない 浴室で適当に済ませたのできっと除草は完璧ではないことをわかっていたし 確認したくもなかった いつかもらった試供品のアルミパウチを破り 乳液を掌にあけて 剃刀が滑ったあとの肌に塗りこむと なにか知らないけれどとても良い香りがしたので 捨てたパッケージをもう一度拾って見たけれど 上手い具合に破れてしまっていて 結局なにか判らなかった
全身に塗り終えたあと ほとんどなんの役にも立たない白いレースの下着をつけた これは毛が透けているとぜんぜん素敵じゃない 淡い色のレースに透けて見えるのは肌色がいい 日に焼けた褐色でも 青白い血管が浮く白色 どちらでもいいけれど 絶対に肉を包む皮膚の色が相応しいと思う
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もう何着目かわからない黒いワンピースを買った 最初に買ったのはジャージーで出来ていてとても着心地が良かったのを覚えている
昼ごはんに誘ってもらったけれど 既に予定があったので断らなければならず残念だった 約束なんてしないで その場の流れや気分で決めるというのが好きなのだけど 相手がいるとなかなか難しいことだ そういうわけで一人でバスに乗り T百貨店で両親と待ち合わせて台灣料理を食べた デザートの愛玉子はとても美味しくて 幾らでも食べたかった
夕方 土砂降りのなか ずぶ濡れで帰宅 傘を持ち歩かないので降られるといつも濡れてしまう 玄関の棚のなかに折りたたみ傘があるはずなので使えば良いのに どうも傘をさすのは好きじゃない どうして降水確率は100%と予報されていたのに傘を持って来なかったのかと呆れられても 信じなかったからではなく 家を出るときには降っていなかったからというだけのことなのだ
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石と蘭 ガラス製のみずうみ を 泳ぐ あたしの部屋な寒すぎて枯れてもーてん 窓側に飾ってたんやけどなぁ うち蘭の花ようけあったのに花が咲いてたの全然知らんわ そらそやろ咲かへんかったでや この石まえに何処やらで買うたんやけど どこやったかな なんや外国のどっかの山で採れた何とかいう石やねん 何ゆうてるかわからんけど水晶やろ ああそれそれ ほんでこのネックレスはなおかんの抽斗にあったやつ あんたか勝手に持ってったのは 花瓶はほれ 引越しの手伝いに行った時嫁がいらんゆうてもろてきたやつや こっちのみずうみはちゃうで 福袋で買った あんたこんなもん買うたんか 口紅はもろたんやで ほらあの背ぇの高い 背ぇの高い誰やったかな もうええ 背ぇが高い誰かしらんにもろたんやな せや背ぇは高かったわ 顔は忘れた 名前も忘れとるやないか まぁせやけどこのユーカリな綺麗やろう もうじき2ヶ月やで ああうれしい!
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部屋のなかに沈んだ空気とひかりで あの人の面影を明確に思い出すことが出来る ヨカナーン もう長い髪を切り 独りで旅に出ると決めていた大人の男だった 夜明けから日没まで働き 税金だって納めていたし 彼の生き方は寄り道ではなく すべてが神話へとつながる人生そのものだと確信していた ヨカナーン わたしは彼のブラウスのボタンを上から一段ずつ外し 女性誌で覚えたやり方で彼自身を愛撫した 吐く息が白く混じり合う冬の午後 あの人はわたしの眼を見つめ正しい撥音で愛の言葉を囁いた ヨカナーン 運命のこども 選び抜かれた聡明で美しい若者 やがて世界中で名の知れた賢者になるだろう 大勢の報道陣に囲まれて 焚かれたフラッシュが彼の眼を瞬かせるとき わたしはあなたの薄い唇を思い出す きっと
悲しくて泣かなかった あの日も 今日も