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舗装のない河が流れる山を越え 枯草が茂る湿地のなか 架線のない線路を汽車は走ってゆく 展望席に立つ男は 西へ向かうという しきりに時計を見ながら早口に話すので そんなに時間を気にしても汽車は定刻通りに着くか それより遅れるかしかないと言うと 忙しげに煙草に火をつけて 別に急いでいるわけではないと言いながら また時計を見ていた 誰かに追われていたのかもしれない 次の駅につくころにはもう姿が見えなかった