1482

シトラスとムスクの香りが汗の匂いと混じった男の首筋に血管が浮いている その肌は日に灼けた褐色で 胸元は筋肉質で張りがあり どんなに鋭い鋼でも切り裂けないようだった わたしは白いワンピースを着て 裸で仰向けに寝転がった男のうえに腰を下ろし 両手にある10本の指を丁寧に一本ずつ舐める 右の小指から順番に 爪も 指の間の皮も 唾液をたっぷりとつけて音を立てながら一本ずつ舐める 左手は親指から 平たい丸に似たかたちの爪 第二関節あたりに傷痕がある人差し指 ささくれが出来た中指 そしてプラチナ製の輪を嵌めた薬指 わたしはその指の根本に噛みついた 男の悲鳴は思ったより高い声だった 脱ぎ捨てていたタイツを素早く首にかけて締めると 血管がより太く浮かび上がりとても魅力的に見えたけれど やがて動かなくなったのを確認して わたしは指を根本から食いちぎり 足と足の間にある太い指のようなものも噛み切った ほんの少し欲張りなのだ もうすぐひとつの時代が終わる