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電車が来るのを待つ停車場に立ちながら 線路へ吸い込まれそうになるのを 何とか思い留まる感覚を知っていますか 特急電車に激突した自分の肉体が衝撃でばらばらに飛び散り 運転席の窓硝子が割れたり 砕けた骨が誰かに当たったりするかもしれない それほど大きくないけれど 骨肉があり 血が通った身体が 内臓と赤黒い血に塗れた肉塊になったのを見たら 隣でお母さんと遊んでいた子供は泣きだし 後ろに並んでいた若者は興奮気味に動画を撮るかもしれない でもそんなことどうだっていい 切手を貼り終えた小包と封筒を残したまま 遺書はない事故を自死と捉えるでしょうか 若くて 健康で 美しく 何を思い悩むことがあるのかと言われる身で あの人は自らが犯した罪の重さを悔いるでしょうか きっと何も感じないでしょうね 人は愛する者の死以外を悼むことはない きっと遅延して乱れた運行予定に舌打ちをするくらいでしょう そういうものでしょう