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わたしのことをそんなに好きじゃない男の子の部屋で そんなに面白くない映画を観て そんなに気持ちよくないセックスをして 明け方にそんなに美味しくないラーメンを食べた10代最後の春 それから何度も桜が咲いては散って わかったことはといえば 彼らは わたしのことをそれなりに好きだったということだけだった そんなに好きじゃない女に時間をさけるほど彼らは暇ではなかった

首都高速道路を走るドイツ車の助手席で のろのろ動くエスカレーターの上で 穏やかに空が白んでゆく埠頭で わたしは早く家に帰ってひとりで眠りたかった