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ふたりで行った海辺のレストランは閉店してもう何年も経つけれど いつか訪れた山奥のダムは わたしたちが生まれた頃に造られたから 生きている内は無くならないでしょうね あなたはもう どうしてその場所を目指したのか憶えてはいない いいえ はじめから知らなかったのね 自分が何を求めているのか 何処へ向かえば良いのか 目標は後からついてくるといえば聞こえはいいけれど あなたは容易く乗り越えた事柄だけを 目標と名付けていた 打ち砕けなかった壁は 壁として見向きもしなかった そうしてやっぱり 忘れてしまう レストランの名前も 土地の名前すらも 沈んだ村の名前を あなたは はじめから知らないでしょうね