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ラブホに忘れ物をした 生の車海老だ

愛人がまだ生きているのをもらったと木箱を少し開けて見せびらかし ベラベラ蘊蓄を語り出して煩いので 横に退けてさっさとことに及び 終わって 最寄りの地下鉄で見送ってからふと思い出し

「車海老は?」 とLINEを送ったら 「忘れてきた でももう帰らなきゃいけないから欲しかったらあげる」 と返信が届いた さして欲しくもなかったけれど そんなもの残されても困るだろうしと ホテルに電話で連絡をしてから引き返すことにした

「あのぅ さっき利用した者です たぶん×××号室だったと思うんですけれど忘れ物をしまして」

「ハイ 何をお忘れでしょうか」

「車海老です 木箱に入ってます」

「あぁ フロントでお預かりしておりますので お名前をどうぞ」

足早にホテルへ戻ると 普段は誰もいない受付に化粧気のない若い女が現れて 笑いながら紙袋に入った車海老入りの木箱を渡してくれた 平身低頭で受け取り 帰宅して箱から出すと まだおが屑の中で動いていたので 洗ってから串に刺して 塩を振って焼いて食べた 自慢されただけあって美味かったので 受付の女にも少し分けてあげたら良かったと思った