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まだおろしていない新しい器を楢木の卓に並べて眺めながら 何十年か前もこうして遊んでいたということだ 植木鉢の水受け皿や 割れた茶碗を拾ってきて 畑のなかでひとりで遊んでいた 大人になり働くようになって 自由に使えるお金が少しは出来て 好きな器を買えるようになったけれど 新しい家族をつくりたいとは考えていない

ここは人形の家だ ぜんぶがままごとだ イプセンの話は読んだことがないけれど もしくは わたしは糸で繋がれた凧だ ふわふわと風に流されて 糸が切れたとき 本当に自由になるのだろうか 墜落した凧がどうなるか知っていたら そんなことは考えたくない 糸を握る人が替われば 生き方もまた変わるのだろうけれど そうすることが煩わしい