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こどものころ 部屋に観葉植物のパキラを置いていた 父が園芸店で何かのついでに買ってきてくれたもので 気に入って窓際に置き せっせと水をやっていたら みるみるうちに大きくなり 鉢が倒れるようになったのに 冬が来たら呆気なく枯れてしまった 室温が氷点下まで下がるのに暖房器具がない部屋だったからだ

氷点下の部屋は寒い 寒いと言うよりは痛い

勉強するにも手がかじかむので 指抜き手袋をつけて鉛筆を握っていた 当然着込んで襟巻きもしている でも どうしてそんな風にしていたのか今でもわからない 妹は部屋に石油ストーブを持ち込んで使っていたのだから そうするべきだったのに わたしは今でも 「いいかどうか」判断が出来ない 正解がわからないことを選択するのが 何より難しいのだ

そもそもパキラは 父が妹へあげたのを 要らないと言われたのをみて 気の毒になり欲しがって見せたのだった 正しさとは何なんだろう