2010

長引く戦争が終わらないうちに、また新しい戦争が始まった。そもそもそれは一度も終わったことはなかったのだけど。遠藤周作氏の本を棚から取り出し、薄い綺麗な紙を巻き付けて読み始めた。読み直そうだ思ったが、一度でも読了したのだったか怪しい。まるで中身を覚えていないのは、ほとんど初見と同じだ。

 

冒頭のイエスの風貌についての考察は、読んでいてとても楽しい。2000年前でも人間というのは人間の姿形をしているし、欲なんてのは当然変わらない。長い黒髪を真ん中で分けて、後ろで一括りにして、髭をたくわえている男は現代の日本にだっている。町中にはびこる貧困、厳しい戒律、わたしたちは今でも救いを求めている。祈ったり、祈らなかったりしながら。そして、2000年経っても、まだ救われない人があまりにたくさんいることに胸が苦しくなるのだった。