2011

船旅に出ることにした。産まれた街へ行く為に、先週思い立って2等客室を予約したのだった。何があるのだろう。何も残ってはいないことを知りながら、わたしは北の大地を目指す。寒いニルゲンドヴォの遥か北の地だ。原住民はみな、海豹の毛皮を纏っているらしいが、そんなものはホフヌンクで手に入らないので、箪笥の奥からなにか動物の毛皮で出来た外套を引っ張り出してきた。ばさばさと振るといくらか毛が抜け落ちたが、へそくりも落ちてきた。今では使われていないお金だったので、その内銀行へ持っていこうと思うが、いまでは大した金額にはならないだろう。