お知らせ

水銀からのお知らせです。

当面こちらをトップに表示していますが、毎日23時になれば新しい夜がきます。

 

  1.  諸般の事情により、当面の間Twitterを休止します。
    ブログは継続しますので、ご興味ある方はこちらのトップページをブックマークして頂けたら幸いです。Twitter復活させました (6/18現在)

  2.  総合表現集団かべちょろ・オールジャンルマガジン『さかしま'17』に寄稿しました。
    6/10,11に開催される福岡ポエイチで販売される予定です。「わたしたちの運命の一日」について、23名が表現した大作ということで、かなり読み応えがあると思います。ぜひお手に取ってご覧下さい。リリー・マーキュリー名義で出演したMV『がらんどうどうめぐり』の制作・監督をされた田中ジョヴァンニさんの編集です。

    youtu.be

  3. 尼崎文学だらけ 『あまぶん』に参加します。実はアンソロやユニット・ゆりとゆら以外で詩集やその他の書籍を出したことが無いのですが、とにかく参加します。
    妥協したくないので、完璧に出来ないならやりたくないし、やるなら徹底的にしたいという性分なのですが、これまでの作品を何らかのかたちに遺したいと思ったこと、過去の自分に落とし前をつけたいことから決めました。

 

 

以上です。なにかありましたら llmrcr★gmail.com (★は@)までご一報ください。

なおFacebookのアカウントは完全に削除したので復旧しません。よろしくお願いします。

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夏至の日 朝露が集められない東洋の魔女たちは 低気圧にやられて布団のなか 昼も夜もない 雨に濡れた花を集めても 夢枕に立つのは死んだひとばかり 透明になった彼が生きてるときには口づけだって交わしたことはなかったのに

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甘い香りの女の肌は陶器で出来ているので その声も空洞の壺のなかで響くように高い 壺は朝 満たされる 夜に乾いてしまうのは至極当然のことだ 油で磨かれた手脚はしなやかに動き 心臓は適切な速度で脈を打つ 誰かに教えられたわけではなく 予め設定されているのだ もっとも自然で 歪みなく 正確に 美しくあるということを

 

煌めく流動体をすくった女の指が 娘の目蓋に触れると その顔にたちまち生気が溢れ出した 雲母の粒子が光をもたらす ささやかな魔法は彼女の一日を照らすのだろう

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時計を身につけなくなったのはいつからだったのだろう ハイスクールへ通いだしたときには 薄い水色をした文字盤のを持っていたし お仕事のときは濃い紺色の文字盤で12と6のところにダイヤモンドがついた銀色のをつけていたのに 多分電池が切れてそのままにしてあるんだった

 

小さなころほど腕時計に憧れていた 大人の象徴のように見えたし 時間を管理することはとても崇高な行為に思えたから でもほんとうは腕に時間を縛りつけられているだけで 戻すことも進めることも事実不可能だった 遅れているのは電池が切れかけているからだ 秒針が長針と短針の間で痙攣をおこすように前後に振れている でも時間が止まるわけじゃない そんなの誰でも知ってるけど

 

きっと買ってもつけないと思う

 

赤い革ベルトに小さな丸いゴールドフレームの文字盤がついたのが一番可愛くて たぶん似合っていた でもきっとつけないと思う そういう女だから

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855

雨が降らない梅雨 低くなった気圧の底みたいな日曜日はなんにも出来ない どんどん腐ってゆく生卵みたいに 止めることも出来ない時間 乾かない洗濯物 iPhoneに向かって天気を尋ねる あのひとのいる国の言葉で わたしの暮らす街の天気を確認することの愚かさ どうして欲望に忠実であることが原動力として機能するのだろう 満たされない想いを新しい情報で埋めてゆくだけで 飛ぶことも出来やしない

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花の名前を知らなくても 電子レンジ以外の調理機器が使えなくても 雑誌以外の本を読んだことがなくても アルファベットのWとVが区別できなくても 泳ぐことも 踊ることも出来なくても あの子は全然問題無いらしい それを狡いと妬むか 気の毒に思うか好きにしたらいいけど 誰かに期待するよりも自分で楽しむほうがいい ドライブに誘われるのを待たずに 運転免許証とちいさな黄色いドイツ車でわたしは何処へでも行ける 天気がよくて気が向いたなら 大好きなあの子を乗せて海へゆくことだって それって素敵なことだと思うわよ

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薄く切った丸いシトロンを浮かべたコークが飲みたい それにラムをほんの少し垂らして夕陽が沈むのを見届けるから 逢魔時でも怖くない

 

連続殺人犯と同じ名前の女は テレビで見た犯人より背が低くて ふっくらとした手とお腹を持っていた そしてとても歌が上手かった 名前のせいでそれなりに苦労したわよと彼女は笑ったけれど 少しも面白くなくてむしろ悲しかった

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夏が近づくたびに新しい水着が欲しくなる 毎年少しずつ流行は変わるから でも花柄の三角ビキニ これさえあれば安心 世界中どこのビーチでも絶対に可愛いから

アンダーは紐で結ばなくていいやつ わたしはちゃんと泳ぎたいから濡れて張り付くスカートも ほどけてしまう紐も要らない 小麦色に焼けた滑らかな肌さえあればアクセサリーもフェイクタトゥーも無くて良い 夏がくるたびにいつかの思い出を引っ張り出してきて わたしは三角ビキニを着たままベランダで眠る 果たせなかった約束と捏造した愛の記憶 世界中どこまでいってもあんたが一番好きだってこと

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時折自分の声が他人のそれに聞こえる 正しく発声出来ているのか確認すると 彼は「問題ない」と答えた でも違和感があるの と続けようとしたが その台詞すら予め用意されたもののように感じられたので わたしは話すことをやめた

 

自然光が差し込む部屋が舞台だ 観客はいない 誰に拍手されることはなく 幕が降りることもなく 淡々と台詞を読み上げる それは大したことではない ある瞬間にわたしは わたし自身が演じている姿を目撃する しかしそれは本当にわたしだったのだろうか?  一組の男女が手を繋ぎ並んで立っている「あなたと一緒にいられるだけで幸せなのよ」 彼女は表情を変えずに真顔でつぶやき 男もやはり無表情で立ち尽くしている 「ねぇ 今のわたしが言った?」彼女は口元だけを動かして喋った「そうだよ」と男は殆ど口も開けずに答えた

 

ブラインドの隙間から差し込む光が長い影を落とす頃 女は用意された台詞を言い尽くした

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850

ちいさな石が好きで幼いころはよく拾ったものだった 家の前栽にまかれた那智黒や御影石まで拾ってポケットに入れて叱られたのだ

 

 

N君という寺の息子としばしば一緒に学校から歩いて帰っていた 本当はK君が一番の仲良しだったのに なぜか彼と遊びながら帰ったときのことのほうがよく覚えている 森で見つけた木の実の甘さや 近道と言って走り抜けたお屋敷の庭だとか 川で捕まえたざりがにの力強さとかをよく覚えていて それからこっそり教えてくれた 綺麗な石が拾える空き地のことも

サーモンピンクの石というよりも 鮭の切り身が化石になったようなもので 誰が捨てていったのか 空き地の片隅に山積みになっていたそれを ひとつずつ並べたり 重ねたり 地面に線をひいたりして遊んだ その中でも特に綺麗な模様の石を集めて 選んでポケットへ入れて帰ったのだけど 何処へやってしまったのだろう 桃色に土留色の筋が入った艶やかな石片 ちょうどこんな色だった

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