2003

あの人は冬に生まれた。祝福の元に、天子様の子として産まれたのだった。水曜日だった。悲しみに溢れた子ども。Wednesdayはsadnessdayだったのか。繊細で、美しくも論理的な文章を綴るひと。感情が少なく、石のように冷たい心を持つ人。けれども、熱くなった石には水が敵わないことを私は知っている。

2001

今日もあの人が好きだった。どうしようもないのに、好きで、夢の中で一緒にドライブをしていた。現実では私が運転していたけど、夢では彼がハンドルを握っていて、私はそれが怖かった。ひとの運転が苦手なのだ。公共交通機関は良いけど、自家用車の助手席に座るのがなんとなく怖い。昔付き合っていたひとは運転が好きで、マニュアル車を容易く操縦しながらクラシック音楽を爆音で流していた。その時も少しも落ち着かなかった。私が好きなヘヴィメタルを流されていても同じだったと思う。とはいえ自分の運転も酷いものなので、なるべく乗りたくない。夢の中で彼は、無表情のまま山道を走らせていた。彼が笑うところをあまり見たことがないからだ。

2000

掃除、洗濯のち買い物へ出た。ここのとこ天気も悪いし、なにより急に寒くなったのが身に堪える。混雑は苦手だが、百貨店は明るく、きらきらしていて楽しい。

 

頭痛を抑えるために薬を飲んで眠る。滅多に飲まないせいかよく効く。ずっと痛みを誤魔化していけたら良いのに。

1999

七の月に世界は終わるって誰が言ってたんだっけ?

 

カルト教団が起こした地下鉄の事件と、都市部を襲った震災のあとから、不条理は非日常ではなくなってしまった。世界は滅亡すると言われていて、津波をもたらした大きな震災が起きたり、現在進行形で続く戦争もあるけど、まだ最期の審判はおりていない。Kが死んだのは21世紀になってからのことだった。27クラブに入ったはずなのに、ずっと歳上だと言っていたのに、彼の友人から違うと言われた。でも、ちょっとした不法侵入で捕まった時に、彼は成人していたから未成年の友人より少し厳しく叱られたと話していた気がする(彼らは別に世の中へ対して悪いことを企んだわけではなかった。ただ景色が良いから鉄塔に登ろうと柵を乗り越えただけだった)。わたしは若くして死ななかったので、何人もの友人を見送ることになった。才能の有無はあまり関係なかったし、良い人ほど早く死ぬというわけでもなかった。

1998

高いところから飛び降りたことはある?わたしはある、といってもせいぜい5〜7mだし、水のなかに飛び降りたからただの飛び込みだけど。それでも、結構ドキドキした。絶対死なないってわかっていたけど怖かった。飛び込みの選手みたいに綺麗に落ちないから、入水の瞬間はかなり痛いし、水着が破れるかと思っちゃった。全然そんなことないんだけどね。鼻に少し水が入ったかもしれない。それはあんまり覚えていない。ただ、友達と一緒に手を繋いで飛び込んだんだけど、わたしの痛みはわたしだけのものだったから、この瞬間死んだとしても本当にそれでお終いなんだろうなって思ったのよ。心中なんていうけど、どんなに身体をきつく縛りあっていても、解けなかったとしても、死んだらもうお互いの身体にも、心にも、触れることは出来ない。だから、わたしは生きているこの世界で、あなたと繋がっていたいと願うのです。

1997

卵を買った。平飼いのものしか買わないことにしているので、夕方だとなかなか手に入らない。もちろん、400円以上出せばあるにはあるけど、それは少し高すぎる。平飼いといっても色々あるらしいけど、鶏舎よりはマシな気がする。似たようなものかもしれないし、わたしは若鶏の胸肉をよく買うので、結局は鶏舎のブロイラーを食べてはいる。